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​G線上の…

☆登場人物☆
・ゴキブリリアント(♀)・・・戦前から続くG族の旧家ゴキブリシュタール家の一人娘。お嬢様だが歴史や伝統を重んじている大和撫子。サムとは幼馴染で元婚約者。

・ゴキブリッサム(♂)・・・通称“サム”。サムは最近力を付けてきたブリッサムコーポレーションの御曹司。ブリッサム家の発展のこととなると人格が変わる。
・バルサン・アースレッド(♂)・・・G族の天敵。どこかのG族と手を組み悪だくみしている。
・ゴキブリトニー(♀)・・・ブリリアントに仕えるメイド。ブリリアントからは良き相談相手として慕われている。ブリリアントを妹のように大切に思っている。
・ナレーション(♀)・・・ナレーションです。

 

 

 


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

ナレ:時は、30世紀。殺虫種族バルサン・アースレッド家とG族の闘いは長きにわたり続き、G族は衰退の一歩をたどっていた。日本に生息するG族で最も力を握っているとされるのが、ゴキブリシュタール家。次いで、ゴキブリッサム家である。長く続く人間とG族の戦い。この戦いに終わりは来るのだろうか―

ナレ:G線上の・・・

バル:サムくん。早速こちらの契約書にサインしてくれたまえ

サム:はい。

ナレ:震える手でサインをするサム。その目にはかすかに迷いが感じられた。

バル:フフフッ…ハハハハハハハッ。君は実に頭のいいG族だ。殺さなくて正解だったよ。約束しよう。ブリッサム家に手は出さない。

サム:本当か

バル:あぁ、俺様は嘘はつかない。ただ、この契約書に書かれている条件さえ守ってくれればね

サム:……契約違反はしません

バル:そうかいそうかい、じゃあ早速、楽しませてもらうよ…フフフフッヒヒヒヒヒヒッ

ナレ:部屋から出ていくバルサン・アースレッド。その後ろ姿を茫然と見つめるサム。デスクに置かれた契約書には、“この契約を行使するには、ゴキブリシュタール家の滅亡が条件”と記されていた。

 


ナレ:ゴキブリシュタール家。

ブリトニー:お嬢様!お嬢様!!大変でございます!!起きてください!!

ブリリアント:ん……まだ……んぅ…

ブリトニー:大変でございます!!お屋敷が燃えております!!!

ブリリアント:…そう……家が燃えてるの……………………っ!??家が燃えてるですって!?

ブリトニー:バルサン・アースレッド家の仕業ですわ!

ブリリアント:お父様!お母様は!!

ナレ:ベットから飛び降りるように慌てて、ドアに向かうブリリアント。

ブリトニー:お嬢様……お嬢様!!ドアを開けてはなりません!

ブリリアント:お父様とお母様が心配なの!おねがい!行かせてちょうだい

ブリトニー:なりません!!ドア向こうにはバルサン家の兵が!!

 


ナレ:ドアの向こうからは、バルサン家の兵たちの叫び声が聞こえる。

バルサン『逃がさないぞ~~~貴様の子供まで根絶やしだあああああ!!!』


ブリトニー:お嬢様、こちらに抜け道があります!お嬢様だけでもこの屋敷から逃げるのです

ブリリアント:私だけ?…ブリトニーあなたは?

ブリトニー:私は、だいだいこのゴキブリシュタール家に仕える身、死ぬ時は、この家とともにと決めておりました

ブリリアント:ダメよ!私一人じゃどうしていいか分からないわ!あなたが必要なの!お願いよ!!

ブリトニー:いいえ、ダメです。お嬢様一人でここからお逃げください。大丈夫です。お嬢様、自信を持って。

ナレ:その時、ブリリアントの寝室のドアが激しい音をたてて開いた。

バルサン:ヒヒヒヒヒッ見つけたぞ。ゴキブリシュタール家の一人娘、ブリリアント!リシュタール家最後の一人!!

ブリリアント:さ…さいご…ですって

ブリトニー:しっかりしてください、お嬢様!ここは私に任せて、早く逃げるのです

ナレ:ブリトニーはバルサンの前に立ちふさがると、そばにあったホウキを手にとって構えた。

バルサン:ハッハッハッ…そんなもので俺様と闘おうとは、ここのメイドは肝が据わってるなぁ…ヒヒヒッ

ブリトニー:さぁ行くのです!!お嬢様!!早く!!

ナレ:ブリリアントは、ブリトニーの剣幕におされて、ベットしたの隠し通路へと姿を消した。

ブリトニー:……私は、ゴキブリシュタール家、ブリリアントお嬢様専属メイド、ゴキブリトニー。すべてはお嬢様のために!!!はぁぁあああああああああ!!!

バルサン:ぐっ……

ナレ:バルサンの鳩尾に、ホウキの柄がヒットする。動かないバルサンに、ブリトニーは安堵の笑みを浮かべた。

バルサン:………………フフッ………これで、勝ったつもりか?……

ブリトニー:…えっ

バルサン:ブリトニー、良い太刀筋だったが、そのくらいの攻撃では、この俺様は死なないさ。ははははははははっ

ブリトニー:そ、そんなっ

バルサン:さてと、そろそろ追いかけないとブリリアントに逃げられてしまう。お遊びはここまでだブリトニー

ブリトニー:…ひっ…う゛…ぐはっ……

ナレ:バルサンはほんの一瞬で、ブリトニーの心臓をホウキで貫くと、ベットの下に逃げたブリリアントを追いかけた。

ブリリアント:お…じょ…うさ…ま………にげ…て………

 

ナレ:ゴキブリシュタール邸宅裏の森。

ブリリアント:はぁっはぁっ…早く遠いところに逃げなくちゃ……早く…

 

 

サム:そんなに急いでどこに行くんだい?ブリリアント

ブリリアント:サム!!助けてっお願い!

ナレ:ブリリアントの目の前に突然現れたサム。

サム:悪いが、助けることはできない。…契約…だからね

ブリリアント:えっ?何を言っているの?……サム?

サム:もう、ゴキブリシュタール家の時代は終わった!!今はブリッサムコーポレーション、いや、ブリッサム家の時代なんだよ!!

ブリリアント:…どういうことなの…?サム!ねぇサム!!

サム:まだ分からないのかブリリアント、これだから旧家のお嬢様は…。ブリッサム家の発展のために利用させてもらったんだよ!

ブリリアント:利用…?

サム:あぁそうさ!ゴキブリシュタール家の滅亡を条件にね!

ブリリアント:なんてこと・・・・!!!

ナレ:彼女は衝撃の事実に、腰を抜かして、その場で泣き崩れた。ゴキブリッサムはそんなゴキブリリアントの様子に内心泣きたくなるほどの悲しみを感じていた。なぜなら彼女は20年前愛し合ったかつての恋人だったからだ。

ブリリアント:サム…いいえ、ゴキブリッサム。あなた変わってしまったのね…ううん、変わったのは私なのかもしれないわ…

サム:………。

ブリリアント:あの時、あなたのプロポーズをうけていれば…。今さら後悔しても遅いわね…

サム:ブリリアント…

ブリリアント:私は別の場所で暮らすことにするわ…さよなら……サム

ナレ:そんな彼女の後姿を、ゴキブリッサムは見つめていた。瞳に涙を浮かべて、今にも彼女を抱きしめたくなる衝動にかられていた。一瞬、彼女がこちらを振り返り、20年前のような微笑を浮かべた。それがゴキブリッサムを縛っていた家柄というものを解き放ったのだ。

サム:ゴキブリリアントォオオオオオオオ!!!!

ナレ:ゴキブリッサムはゴキブリリアントを強く抱きしめたのであった。

ブリリアント:サム…愛してるわ

ナレ:サムは懐から、携帯電話をとりだすと、バルサンへ繋いだ。

サム:バルサン・アースレッド様、ブリリアントならさっき見つけました。海辺で逃げてるところを偶然……はい。……いえ、こちらで始末いたしました。…はい。では、失礼します。

ナレ:携帯を森の奥へ放り投げるサム

ブリリアント:いいの?

サム:あぁ、いいんだ。もう、君がいれば何もいらない。やっとそれがわかったよ。…愛してるブリリアント

 

ナレ:そうして、2人は静かな場所で幸せに暮らしましたとさ。おしまい
 

​作:寿音

TAKE!!

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